火曜日〜木曜日

1日目

緊張しながら病棟へ。着替えずにベッドに入るのも変だなと思い、所在無くそわそわしていると、今日の昼の担当の看護師さんが来て、病室や共用設備を案内してくれた。かわいい人でテンションが少し上がった。自分が世話してもらう側なのに完全に余計なお世話とは分かりつつ、「かなり痩せているけど仕事大変なのかな」とか勝手に想像する。看護師になった高校の同級生(高校の軽音部で組んでいたバンドのボーカルの当時の彼女)も、いつもTwitterでしんどそうにしている。軽い病気の自分は極力迷惑をかけないようにしようと思う。

勇気を出して隣のベッドの患者さんにも声を掛けて挨拶。優しそうなおじさんで、こんな冴えない若輩者相手でもとても丁寧に対応してくれた。ずっとこの人が隣なら安心だと思ったけれど、明日朝退院するとのこと。

12時に昼食。全体的に味が薄くて食感はベチャベチャ。やっぱり瀬戸風味を持ってくれば良かった。

食べ終わった食器をどうしたらいいのか分からず廊下でボケーっとしていたら、隣のベッドの患者さんがわざわざ声を掛けてくれて教えてくれた。去り際、「何でも聞いてくださいね」。親切すぎる!迷ったけれどやっぱり始めに挨拶しておいて良かった。

持参していたSwitchでスーパーマリオ64(父が生前やっていたのが懐かしい。DS版もやった。自分的にはマリオと言えばこれ!)をやって暇潰ししていたら、お医者さんに呼ばれて、手術の説明を受ける。先日外来で診察してくれた先生とは違う先生で、明日も執刀を担当してくれるとのこと。ゆっくりしっかり説明してくれて、安心。最後に、「それじゃ、明日は頑張ろうね」。僕は頑張ること何もなくてただ寝てれば良いだけなのに、お優しい。よろしくお願いします。

病棟に戻り、シャワー室で剃毛。患部に陰毛の端くれが生えているため。アシンメトリーの、間抜けでかわいいアンダーヘアースタイルになった。しばらく風呂に入れないかもしれないから、頭と身体も念入りに洗った。

病室で、5時に夢中!ふかわりょうMC最終日を感慨深く観る。就職してからゴジムはほとんど観られていなかったけれど、入院のお陰で観られて嬉しい。

夕食後、量が足りないので売店でチョコもなかジャンボを購入。ニコニコで食べ切った後、手術前の注意書きに「夕食後のアイスは控えること」と書いてあることに気が付き、焦ってナースステーションに「すみません、アイス、食べちゃいました」とアホみたいな報告。「迷惑をかけないようにしよう」という誓いは初日にして儚く砕け散った。(結局食べても大丈夫だった。)

引き続きマリオ64をプレイしたりテレビを観たりしながら過ごし、radikoでオードリーのANNを聞きながら就寝。

 

2日目

起き抜け、まだ若干寝ぼけたまま歩いて手術室へ。担当の先生は、昨日はにこやかだったけれど、今日は口数少なく笑顔無し。不機嫌かな?大丈夫かな?と少し心配に。

手の甲に点滴、脚にマッサージ機(エコノミー症候群防止用らしい)、おでこになんかチクチクする測定機器、口に全身麻酔のマスクを付けられ、3回深呼吸したところから、パッタリ記憶が無い。

「終わりましたよー」みたいなことを言われて目を覚まし、手術室にいる間にお礼を伝えなきゃと思って、朦朧としたまま急いで「ありがとうございました」とか「快適に過ごせました」とか言ったような気がする。前者は良いけど、後者はちょっと変だったかもしれない、と後から思った。全身麻酔は、休みの日に二度寝して意識が薄らいでいくような心地良いまどろみを想像していたけれど、気持ち良くも悪くもなく(どちらかというと悪い感じで)、ただ意識が無くなるだけ、と言う感じだった。

気が付いたらまた病室に戻っていた。身体は起こせないけれど手は動かせたので、radiko空気階段の踊り場と三四郎のANNを聞く。三四郎のANNはたまに聞くといつも何を話しているのか良く分からないけれど、今日は全身麻酔が抜け切っていないので、尚更分からない。店長のタートルトーク(蒙古タンメン中本のテーマパークにあるアトラクション)、というフレーズだけはふふっと笑って、「あ、笑えるくらいには元気だな」と分かった。

意識が段々はっきりしてくるにつれ、ふんどし型の手術用下着から金玉がはみ出ていることが気になって来たけれど、掛け布団の下には色々と管とかケーブルとかが通っていて、上体を起こせるようになるまでは直せそうになくもどかしい。そういえば、隣のベッドのおじさんはもう退院したみたい。ちゃんと挨拶したかったな。

しばらくしてだいぶ動けるようになり、金玉も無事収納し、看護師さんと歩行訓練。少し怠いくらいで、特段問題無し。いつもの出勤時に比べれば足取りは軽やかなくらい。病棟を一周して、「あとは自由に動いて良いですよ」と言われた。特にすることもないけど、嬉しい。

体内時計を正そうと病棟のラウンジで日の光に当たっていると、看護師さんが点滴の交換に来てくれて、次いで先生がふらっと来て、君付けでにこやかに呼びかけてくれた。手術室でのピリッとした雰囲気は、単に集中していただけだったみたい。入院前にネットで見た情報だと「簡単な手術なので、研修医が執刀することも多い」と書いてあったけれど、そんな簡単な手術でもあんなに集中して臨んでくれていたんだな、と思い、プロフェッショナルを感じた。

手の甲に点滴が入っているのでマリオ64ができず、ラウンジでミツメの新譜を聴いて過ごす。手持ち無沙汰なので、窓の外を行き交う人々を観察。人間観察をしているといつも、前略プロフィールにおける「趣味:人間観察」というアンニュイぶりっ子が何となくかっこよく思えたのは何だったんだろう、と思う。でも、日記を(普段は)ですます調で書いてる辺り、僕のアンニュイぶりっ子はまだまだ抜けていないのかもしれない。ダサいのでやめたい。クソ。……やることがないからネガティブ思考に陥ってしまった。

桃鉄なら片手で遊べることが気が付き、黙々とプレイしていると夕食の時間に。食べ終わって点滴が抜かれると、急に身体が怠くなって、動いたりゲームをするのが面倒になった。テレビを観たりぼーっとしたりして時間を潰し、就寝。大部屋を貸切状態だったので、比較的よく眠れた。

 

3日目

起きてから頭が痛く、調子が出ない。だけど、昨日売店で買っておいたのりたまを朝食のご飯にかけたら、爆裂にうまい。のりたま最高!のりたま爆裂!と一時的にテンションがあがり、さらに今日の昼担当の看護師さんが初日のかわいい看護師さんでもういっちょテンション上がり、よっしゃ!と気合いだけ入るも、やっぱり頭が痛くて、身体も怠く、寝る以外何もできない。少し寝た後、頭痛が強くなってきたので、躊躇いつつナースコールをしてロキソニンを貰い、少し元気に。はじめからこうすれば良かった。

斜め向かいのベッドに、手術終わりの患者さんが入ってきた。その横で看護師さん達が、患者情報管理用のノートパソコンを囲んで「キーボードの"9"が壊れていてログインできない!」と騒いでいる。件のかわいい看護師さん曰く「怒ったみたいに押せば入力できますよ。なんかこう…ぐぅっと?(照)」とのこと。あざとい。かわいい。

昼食は、珍しく白米が無く、焼きそばと抹茶ババロア。ちょっと薄味ではあるけど、普通に美味しい。のりたまは活躍できず。

その後先生に呼ばれて診察室へ。消毒とガーゼ交換をしてもらい、特に問題無いのでそのまま退院できることに。5cmくらい切ったのに、動かしたり触ったりしなければほとんど痛くないから、本当に凄い。先生には感謝してもしきれない。

同居人が迎えに来てくれて、第一声が「腹減った」と「ビニール傘買ったのに雨止みやがった」でガックシ来たけれど、わざわざお迎えのために仕事を午後休にしてくれたので、こちらにも感謝。(タクシーに乗った後、ちゃんと労いの言葉を掛けてくれた。)

それから、前の日記を読んで連絡をくれた人や、手術後に朦朧とする意識の中で色とりどりのケーブルが繋がっているのが「映え」だなとか思って何の気無しに上げたインスタのストーリーにメッセージをくれた人、連絡はせずに心の中で心配してくれた思慮深いあなた。極々少数の大切な友達です。ありがとうございました。

抜糸はまだだけど、お陰様でなんとか大丈夫そうです。

来週から仕事復帰、そして異動、うう、この身体で頑張れるか……。